謎の電波ジャック「ワイオミング事件」見た者に異変が起きるという不気味な映像の正体
テレビを見ていると、突然映像が乱れた。
いつもの番組は消え、画面いっぱいに映し出されたのは白黒のテストパターン。
そこには、
「WE PRESENT A SPECIAL PRESENTATION」
そして、
「333-333-333」
という謎めいた数字が表示されていた。
しばらくすると画面は切り替わり、暗闇の中から奇妙な人間の顔が現れる。
いったい誰が、何の目的でこんな映像を流しているのか?
さらに恐ろしいことに、この映像を長時間見た人々には「異変」が起きたとも噂された。
ネット上で長く語り継がれている、
「The Wyoming Incident(ワイオミング事件)」である。
「333-333-333」突然始まる特別放送
問題の映像は、一見すると古いテレビ放送を録画したもののように見える。
画面には大きく、
「WE PRESENT A SPECIAL PRESENTATION(特別番組をお送りします)」
その下には、
「333-333-333」
という数字。
だが、これから何が始まるのかという説明はない。

そして映像が進むと、さらに不可解な文章が現れる。

「あなたは、とても美しいものを見るだろう」
その直後。
画面に現れるのは、美しいものとはほど遠い。
暗闇の中に浮かぶ、人間の頭部だった。

顔はどこか無機質で、表情があるようでない。
こちらを見ているようにも見える。
しばらくすると顔は消え、また別の文章が現れる。
そして、再び顔。
この繰り返しが妙に居心地の悪い映像を作り出している。
映像に現れる不気味な言葉
ワイオミング事件の映像が不気味なのは、顔だけではない。
途中には、視聴者自身に話しかけているような文章が次々と表示される。
たとえば、
「WHY DO YOU HATE?」
――なぜ、あなたは憎むのか?
そして、
「YOU ARE ILL」
――あなたは病んでいる。
さらに、
「WE JUST WANT TO FIX YOU」
――私たちは、ただあなたを治したい。

誰が「私たち」なのか。
何を「治す」というのか。
その説明はない。
さらに映像では、
「WHAT HIDES IN YOUR MIND?」
――あなたの心には何が隠れている?
と問いかけたうえで、
「WE HAVE ALREADY SEEN IT」
――私たちは、もうそれを見た。
と続く。
ただテレビを見ているだけだったはずなのに、いつの間にか画面の向こう側から自分自身を観察されている。
そんな錯覚を覚えさせる構成になっている。
問題の「ワイオミング事件」映像
ワイオミング事件として知られる映像は、ネット上で転載・再編集されたものが長年共有されてきた。
https://www.youtube.com/watch?v=E7ohqAsxwgE
※不気味な顔や音声、点滅する映像などが含まれるため、苦手な方は閲覧注意。
映像そのものは非常にシンプルだ。
白黒の画面、文章、奇妙な3Dの顔、不穏な音。
派手なホラー映画のような演出があるわけではない。
それでも、深夜に一人で見るには十分すぎるほど気味が悪い。
この映像は「テレビ局を乗っ取って流された」とされた
ネット上で広まった物語によると、これは単なるホラー映像ではない。
アメリカ・ワイオミング州ニオブララ郡周辺で放送されていたローカルテレビ局の電波が、何者かによって乗っ取られた。
通常の番組を中断して流されたのが、この映像だった――。
という設定になっている。
犯人は特定されず、映像の出所も分からない。
それだけなら「謎の電波ジャック事件」で終わる。
ところが、この話にはさらに恐ろしい続きがあった。
見続けた視聴者に「異変」が起きた?
問題の映像を長時間見ていた一部の視聴者が、その後体調不良を訴えたというのだ。
語られている症状は、頭痛、吐き気、嘔吐、幻覚と様々。
なぜテレビ映像を見ただけで、そんなことが起きるのか?
そこで登場したのが「音」に関する説だった。
映像には人間の可聴域ギリギリに近い特殊な周波数が使われ、それが視聴者に身体的・精神的な影響を与えた。
そんな説明まで付け加えられた。

もしこれが本当なら、単なるいたずらではない。
何者かが意図的に人間の精神へ作用する映像を公共の電波に流したことになる。
当然、
「人体実験だったのでは?」
「洗脳映像なのでは?」
という想像も膨らんでいった。
だが。
ここまで読んで、
「そんな大事件、本当にあったの?」
と思った人もいるだろう。
その疑問は正しい。
実は「ワイオミング事件」は実在しない?
ここからが、この話の面白いところだ。
調べていくと、
ワイオミング事件と呼ばれるテレビジャックが実際に発生したことを裏付ける記録は確認できない。
本当にテレビ放送が乗っ取られ、さらに複数の視聴者に健康被害まで発生したのであれば、ニュースや放送局、警察など何らかの記録が残っていてもおかしくない。
しかし、そうした実在事件としての記録は見つからない。
では、この不気味な映像は何なのか?
答えは、
インターネット上で作られたホラー作品だった可能性が極めて高い。
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2007年、ネット上に現れた「存在しない事件」
ワイオミング事件の映像と物語は、遅くとも2007年1月頃にはネット上を漂い始めていた。
そして2007年2月には、
「Weird Video I Found」と題された映像がYouTubeに投稿されている。
https://www.youtube.com/watch?v=K21YdhuxjlM
※不気味な顔や音声、点滅する映像などが含まれるため、苦手な方は閲覧注意。

さらに当時のフォーラムでは、ユーザーたちが映像に隠された意味や新しい動画を探し始めた。
「333-333-333とは何なのか?」
「映像はまだ存在するのか?」
「次の動画はどこにある?」
そんな考察が飛び交い、物語は単なる一本の動画から、参加者自身が謎を追う遊びへと拡大していった。
現在では、Something Awful周辺のユーザーによるいたずら、そしてARG(代替現実ゲーム)的な企画として展開されたものだったとする記録が残っている。
つまり最初から、
「実在する事件について説明した映像」
ではなく、
「実在する事件のように見せること自体が作品の一部」
だったわけだ。
なぜ多くの人が信じてしまったのか?
今ならYouTubeで不気味な映像を見ても、
「アナログホラーかな?」
と考える人は多いだろう。
だが、ワイオミング事件が広がったのは2000年代半ば。
今ほど「フェイク映像」「ARG」「アナログホラー」という文化が一般的ではなかった。
しかも映像は妙にリアルだった。
画質は悪く、テレビを録画したように見える。
事件の舞台として具体的な地名まで登場する。
そして、
「これは実際に起きた電波ジャック事件の映像です」
という物語と一緒に拡散される。
ネットで偶然この映像を見つけた人にとって、どこまでが創作なのか判断するのは簡単ではなかったはずだ。
本当ではない。なのに、なぜか怖い
結局のところ、ワイオミング事件は実際に起きたテレビジャック事件ではなかった可能性が高い。
映像を見た人々が集団で嘔吐した、幻覚を見た、謎の周波数によって精神を操作された。
そうした話についても、実際の被害として確認できる証拠はない。
だが不思議なことに、問題の映像を改めて見ると気味が悪い。
本物の事件ではなかったが、それでも画面の向こうからこちらを覗かれているような、妙な感覚だけは残る。
そして何より興味深いのは、存在しなかった事件が、20年近く経った今でも「事件」と呼ばれていることだ。
昔なら口伝で生まれていた都市伝説が、インターネットでは動画と一緒に残り続ける。
ワイオミング事件で本当に起きた「事件」があるとすれば…
一本の作り物の映像が、いつの間にか都市伝説そのものになってしまったことなのかもしれない。
※ワイオミング事件は、実在した放送事故ではなくインターネット上で展開された創作・ARGとして扱われています。また「視聴者に頭痛・嘔吐・幻覚などが発生した」「特殊な周波数が原因だった」という記述は都市伝説のストーリー内で語られる内容であり、実際の健康被害として確認されたものではありません。

