「怖がらないで」謎のウサギが映し出されるテレビ。不気味な映像「L3GL3SS」の正体
インターネットには、ときどき出どころの分からない映像が現れる。
誰が作ったのか。
何のために作ったのか。
そして、なぜこんなものが存在しているのか。
今回取り上げるのは、海外の掲示板で語られていたある奇妙な映像にまつわる都市伝説だ。
その名前は、「БЕЗНОГNМ」
投稿者はこれを英語で「L3GL3SS」と表現している。
そして、この映像には不穏な噂がつきまとっている。
「テレビ局が何者かに乗っ取られ、この映像が突然放送された」
一部では映像を見た人々に異変が起きたとも語られている。
しかし、本当にそんな事件はあったのだろうか?
今回はこの奇妙な映像について調べてみる。
実際の映像はこちら。※映像が流れます、苦手な方はご注意ください
(https://www.youtube.com/watch?v=HIuq8feYNWw)
突然テレビに映った「怖がらないで」
掲示板の「あなたの地域で最も怖い都市伝説やホラーストーリーを教えて」という投稿に、一人のユーザーが奇妙な話を書き込んでいる。
それによると、あるテレビ局が何者かによってハッキングされ、通常の放送の代わりに不可解な映像が流されたという。
映像の冒頭、画面には静止画とともに、ロシア語でこんな言葉が現れる。
「НЕ БОЙТЕСЬ(DON’T BE SCARED)」
日本語にすると、「怖がらないで」という意味だ。

怖い映像を見る前に「怖がるな」と言われる。
それだけでも十分に不気味だが、映像はここからさらに奇妙になっていく。
画面に現れるうさぎ
数秒後。
映像には、突然ウサギのようなキャラクターが現れるという。
本来ならかわいらしい存在のはずなのに、この映像では妙な不安感がある。

そして画面には、数字とアルファベットを混ぜた不可解な文章が次々と表示される。

翻訳するとこうなる。
1)НЕ ПЫТАЙТЕСЬ ЧТОТО ИЗМЕНИТЬ!
→ DON’T TRY TO CHANGE ANYTHING!(何かを変えようとするな!)
2)ДУМАЙТЕ ТОЛЬКО О СЕБЕ!
→ THINK ONLY ABOUT YOURSELF!(自分のことだけを考えろ!)
3)РУКИ
→ HANDS(手)
4)ДОСМОТ?
→ この単語は表記が不完全・崩れている可能性があり英訳を確定できず。
もし ДОСМОТР なら → INSPECTION / SEARCHで検査・身体検査と訳せる。
脈絡もなく説明はない。
意味が分からないからこそ、不気味さだけが残る。
「見た人がおかしくなった」という噂
さらに恐ろしいのが、この映像を取り巻く噂だ。
掲示板では「映像を見た人がおかしくなった」、「一部の人間は行方不明になった」
そんな伝説が存在すると紹介されている。
もし本当にテレビ放送が乗っ取られ、大勢の視聴者がこの映像を見たのならとんでもない事件である。
しかし、この事件が本当に起きたことを示す確かな記録が、見つからないのだ。
少なくとも今回確認できた範囲では、
「このテレビ局で実際に放送された」
「映像を見た人が失踪した」
と裏付けられる信頼性の高い報道や記録は確認できなかった。
つまり現時点では、実在する奇妙な映像に、後から都市伝説的な物語が付け加えられた
という可能性も考えておく必要がある。
元ネタ?「Wyoming Incident」との共通点
この話には、非常によく似た有名なネット怪談が存在する。
「The Wyoming Incident(ワイオミング事件)」だ。
こちらもテレビ放送が何者かによって乗っ取られ、不可解な映像が流された、という設定を持つ。
映像には奇妙な顔や不可解なメッセージなどが登場し、それを見た視聴者に異常が起きた――という物語がインターネット上で広まった。
しかし、Wyoming Incidentについても、実際に発生した放送事故というより、インターネット上で生まれた「クリーピーパスタ」と呼ばれるネット怪談として知られている。
そして興味深いことに、L3GL3SSを紹介した投稿者自身も、
「Wyoming Incidentに似た神話」と説明している。
となると、
「テレビ局がハッキングされる」
↓
「意味不明な映像が流れる」
↓
「それを見た人間に異常が起きる」
という構造そのものが、インターネット怪談の一つの型になっているのかもしれない。
なぜ「意味不明な映像」は怖いのか
個人的にこの手の映像で一番怖いのは、グロテスクな映像そのものではない。
「何のために作られたのか分からない」ことだ。
映画なら怖がらせるために作られていると分かっている。
ゲームなら製作者がいる。
広告なら商品を売るという目的がある。
しかし、突然現れるうさぎ。
「怖がらないで」という文章。
「何も変えるな」
「自分のことだけを気にしろ」
そして唐突な、
「HANDS」
人間は意味の分からないものを見ると、無意識に意味を探そうとする。
その空白を埋めるように、
「これは洗脳映像なのではないか」
「テレビ局が乗っ取られたのではないか」
「見た人がおかしくなったのではないか」 という物語が生まれていく。
もしかすると、L3GL3SSで最も恐ろしいのは映像そのものではなく、
映像を見た人間たちが、その周囲に作り上げていった物語なのかもしれない。
物語の真相
БЕЗНОГNМは、本物のテレビジャック事件を記録した映像ではなく、「テレビジャック事件の映像」を装って制作されたネットホラー作品である可能性が高い。
そして後から、
「2008年7月4日にテレビ局が乗っ取られた」
「見た人がおかしくなった」
「行方不明者が出た」
といった噂が加わり、一つの都市伝説へと成長していったと考えられる。
つまり、映像は本当に存在する。
だが、映像を取り巻く恐ろしい「事件」は創作だった可能性が高い。
それでも面白いのは、この映像がネットから消えなかったことだ。
2008年に広がった映像が十数年後も残り、掲示板では再び「自分の地域に伝わる怖い都市伝説」として語られている。
誰かが作った一本の動画、それを見た誰かが噂を付け加える。
別の誰かが、その噂を「昔本当にあった事件」として語る。
そして長い時間が経つうちに、創作と現実の境界がぼやけていく。
もしかするとこれこそが、インターネット時代の都市伝説の生まれ方なのかもしれない。
もし今夜、見ていたテレビが突然途切れ、真っ暗な画面に
「DON’T BE SCARED」
と表示されたら。
あなたは、その続きを見ますか?

